「ごめんね。君があまりに素で驚いたんだ。周りがギラギラしているのを、ひとりぽやんと見ているのが可愛くて」
「あほっぽく見えました?」
「そこまで言ってないよ。なんていうか、とてもマイペースに見えたんだって」
くすくすと笑いながら、葵は頭を掻く。その仕草のひとつひとつが、とても上品で、自分の周囲の男の子たちとは全然違う。
自分をよく見せようとする男の子は好きじゃないけど、彼みたいに育ちがいいと、嫌味なく見えるらしい。なんとなく斜に構えて見てしまっていて、申し訳なく思えてくる。
「カメラ見てたんだ」
「え? はい」
「どんな写真撮ってるの?」
「いつも、同じ場所ばっかり撮ってて。代わり映えしないので」
「へえ? なんかそういうの、格好いいね。よかったら見せてよ?」
ちょっとだけ躊躇したけれど、面と向かってお願いされると、断りづらい。
おずおずと電源を入れて、一枚表示にしてみせる。
そこには、今朝撮影したいつもの三叉路が映っている。たしか、これを撮影したほんの十秒ほど後に、志弦が玄関の戸を開けて出てきたのだ。
代わり映えのしない写真だけれど、やっぱり、一枚一枚に志弦との思い出が詰まっている。それを他人に見られるのが嫌で、里央はすぐに電源を消してしまった。
「あほっぽく見えました?」
「そこまで言ってないよ。なんていうか、とてもマイペースに見えたんだって」
くすくすと笑いながら、葵は頭を掻く。その仕草のひとつひとつが、とても上品で、自分の周囲の男の子たちとは全然違う。
自分をよく見せようとする男の子は好きじゃないけど、彼みたいに育ちがいいと、嫌味なく見えるらしい。なんとなく斜に構えて見てしまっていて、申し訳なく思えてくる。
「カメラ見てたんだ」
「え? はい」
「どんな写真撮ってるの?」
「いつも、同じ場所ばっかり撮ってて。代わり映えしないので」
「へえ? なんかそういうの、格好いいね。よかったら見せてよ?」
ちょっとだけ躊躇したけれど、面と向かってお願いされると、断りづらい。
おずおずと電源を入れて、一枚表示にしてみせる。
そこには、今朝撮影したいつもの三叉路が映っている。たしか、これを撮影したほんの十秒ほど後に、志弦が玄関の戸を開けて出てきたのだ。
代わり映えのしない写真だけれど、やっぱり、一枚一枚に志弦との思い出が詰まっている。それを他人に見られるのが嫌で、里央はすぐに電源を消してしまった。
