夏色モノクローム

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 合コンは六本木にある小洒落た居酒屋で行われた。
 友人が絶対にこの合コンをしたいと言っていた意味もよくわかった。
 まさか相手が、お金持ちが多いという噂の、青山にある有名私立大学の経済学部の人たちなんて。

 事前に聞いていたら、さすがに友人の誘いでも、里央は逃げていただろう。
 里央はキラキラしている男子があまり得意ではないのだ。世界が違う人に感じて、物怖じしてしまう。

 なんとか周囲に合わせてはいたけれど、一時間ほど頑張ったら疲れてしまった。
 期待して頼んだソルティドッグもちょっと濃かった。ソルティドッグ、好きなのに。美味しくなくてがっかりだ。


 ちょっとだけお手洗いと席を抜けて、店の外のベンチに腰かける。
 この季節、夜になっても外は空気がぬるくて、スッキリしない。
 手持ち無沙汰に持ってきたカメラの電源ボタンを押し、撮りだめた写真を眺めていく。三×三の画面に並んでいるのは、全部、同じ三叉路だ。
 代わり映えのしない、田舎っぽい街並み。今はここが、里央にもっとも馴染んだ場所だ。
 こんな六本木のお洒落な店の前じゃなくて、志弦のいるあの場所に帰りたい。

 はあ、と大きくため息をつきながら、電源をオフにしたところで、カランと氷が鳴る音がした。
 はっとして顔を上げると、目の前に透明なグラスがある。氷と透明な液体が入っているそれは、おそらく、水。