……なんて。正確には、彼の方が開き直った。
 彼の今までのだるだるとした服装は、いわば彼なりのバリアだったことに気がつく。
 家の外装もそうだけれど、彼はどうも、自分をよく見せないようにとわざとだらしないふりをする傾向がある。
 ただ、里央に対しては、そんな必要はないと判断したらしい。だって里央は、几帳面でこだわりが強い彼の一面を、すでに知っているのだから。

「志弦さん。今日も好きですよ?」
「はいはい。授業頑張れよ」

 ただ、塩対応は相変わらずだ。手をひらひらさせながら、彼はすぐに家の中に入っていってしまう。
 進展はないようだけれど、この変わらないところも、里央にとっては嬉しくもある。
 避けられていない。ちゃんと顔見知りに昇格できた。――それで十分だ。

「よし、試験試験っ」

 夏休みももう間近。
 そうして試験期間にさしかかった、ある火曜日のことだった。