「歪んでません? 斜に構えた感じというか。ウケるためだけのイラストだったら、もっと、キャラクターも表情豊かになっているでしょうし。明るいイメージにしたりとか、あそこまで、自分の個性にこだわらないと思うんですけど。……こう、我が、出てるでしょう?」
「……」
「すっごく頑固で、面倒な人だと思うんですよ。あと、繊細。格好よさのなかに、そういうダメ人間さが出てるっていうか――」
「ダメ人間さ」
「ええと。味わい深い人間味がにじみ出てるところが、すごく好きで」

 なぜだろう。どんどん志弦の表情が微妙なものになっていく。

「あー……人間味。出てるか?」
「出てますよ。すごく」

 里央はしっかりと頷いた。

「『自分は作品でしか語らないぞ』って硬派なふりして、SNSは作品一本で勝負しているのに、たまに猫ちゃんの画像あげてるところとかも可愛いですよね」
「ぶっ」

 ごほごほと、また志弦がむせている。
 案外、感情豊かなのだなと思う。
 現ノ最中と同じだ。気怠そうで感情の起伏があまりなさそうに見えながらも、実に人間くさいというか。
 そんな彼の一面がわかって、里央はますます、胸の奥が擽られる感覚を覚えた。

 掴みきれない。
 でも、そんな彼が、気になって仕方がない。

 週に二回、ないしは三回。あの三叉路ですれ違い、一方的に挨拶をするだけの関係でしかなかったけれど。

(――あなたのこと、もっと知りたいです。志弦さん)