父がウチに呼びつけて申し訳なかった。 
事前に父からは運命や天使、後光という言葉は
リーヴァイス伯爵には使うなと、言われた。

「長女のアデラインではなく?」

伯爵は姉の方を勧めたいようだった。

「私はこれから王太子殿下のお供で帝国へ参ります
 勉強熱心な殿下ですので、帰国はいつになるか
 ……アデライン嬢は私と同じ年齢です
 美しい花の盛りをお待たせ出来ません」 

我ながらよく言うよと思ったが、人の良い伯爵はご納得してくださった。

「承知致しました
 クリストファー様がお戻りになるまで、娘の
縁組は止めておきます」

ただ、やはりまだ幼いので、正式な婚約は……と口を濁された。
先程、俺が言った帰国が何年先かわからない、というのを気にされたご様子だ。

伯爵の本音は、俺が戻らずグレイスにいい縁談が来たら、そちらを優先したいのだろう。

思っていたより人の良いだけの伯爵じゃないな。
これだから、警戒の目を緩める事は出来ない。
(決して監視ではなく、警戒だ)

彼女に来る縁談は全部潰してやる、と誓った。
伯爵のお気持ちも判るが、帰国が5年以上先とか、そんなことは有り得ない。
王太子殿下だ、留学なんて長くても5年以内だ。

もしそれより長引けば、家族の誰かを病人にして
俺だけ帰国しても。
(いやいや、耐えるけどね、
ふたりの安定した将来の為に)

グレイスには俺の事は話していないらしいので
伯爵家に会いに行けなかったが、
初等部の校庭で、子供達と戯れる天使を覗きに行った。

今日はハンカチ落としをしていた。
昨日のフルーツバスケットも楽しそうだった。
天使の笑顔は俺のやる気をチャージしてくれる。

グレイスの様子(主に縁談系)を、こまめに連絡してもらう手筈は整えた。

君の為にも、がんばってくるよ!