彼女を泣かせてしまった。
女性が結婚できる年齢になるまで、10年近く待っていた彼女を。

彼女の実家リーヴァイス伯爵家の動向は、俺個人で雇った専門の人間から定期的に報告させていた。

その10年間の長い年月には、会えなくて悔しい日もあった。
会えなくて相手を想う時間が愛を育てると、昔から歌われているが、愛を育てていたのは俺だけ。

彼女は俺の事など知ってはいなかったから。

グレイス……君が大人になるまで、俺はずっと待っていたのに。

 ◆◆◆

17歳になって王太子殿下の留学に近習として同行しろ、の話が来たので断るしかないと思い、
理由を父に伝えると。
理解出来ないモノを見る目で、父は俺を見た。

「グレイス嬢……どこで見初めた?」

「4年前にウチで年齢の近い者を集めたガーデンパーティーが」

「待て、リーヴァイスの次女は幼すぎて招待していない筈だ」

「彼女の姉のアデライン嬢が出席していまして」

王立学園中等部在学中に、俺の将来的戦略的人脈を拡げるように開かれたパーティーだった。
メインターゲットの公爵家の子息を出迎える為に、俺は馬車寄せに立っていた。

そこに天使が現れたのだ。