ベッドの上のグレイスの姿を見た途端、軽い
パニックに襲われた。

夜着の上からガウンは羽織っているが、チラチラ見える天使の素肌がおそれ多くて。

思わず横を向いて口元を掌で覆う。
自分が何を叫ぶか判らない。
これでは、俺はデートの時から何も成長していない。


落ち着け、落ち着け、
落ち着けない。
7つも下の天使は落ち着いてるじゃないか。
つぶらな紫の瞳が俺を見ている。


そうだ、そうだ、白い結婚の話だ。
俺は君を大切にしたい。
絶対に傷つけない、無理はさせない。
愛してる、愛してる、愛してる……

「き、君とは白い結婚だ!」

……俺は今何を叫んだ?
イーサンに言うなら最後に言えよ、と忠告されていたのに。

グレイスの反応がないので、余計に慌ててしまう。
ただ、無言で俺を見つめている。

自分でもよく判ってなかったが、
君が応えてくれるなら、今夜だって。

侯爵家の後継の話なんてするつもりなかったのに、何を口走ってるのか判らなくなって、
俺は、俺は。

天使に助けて貰いたくて、彼女に手を伸ばそうとしたら。

いきなりグレイスが、泣きながら部屋を飛び出した!

「グレイス、待って!」