花嫁姿のグレイスがあまりに眩しくて、俺は正面から彼女を見ることが出来なかった。
その分、彼女が招待客と話したり微笑んだりしてるのを横目でチラチラ見てしまった。

相変わらず家族の視線も生温かったが、何故か彼女の親族席の老婦人から物凄く見られている気がした。
グレイスの大叔母上だと、義父上からご紹介いただいた女性だ。

リーヴァイスの義父上は酒に酔い始めて、周囲の客に最初の婚約の申し込みは……等と
言い出したので、俺の父が側に付きに行った。
要らない事を言い出さない様に脅し、いや釘を指しに行ったのだろう。

王太子殿下は御祝いのお言葉をくださった。
警備が大変なので、正直来ないでくれたのは助かった。

先にお言葉を読ませていただくと、
グレイスの一輪車の乗りっぷりを絶賛されていたので、そこの箇所は塗りつぶした。

殿下には時間が出来たら、グレイスを王宮に連れてくるように言われていたが、事前に打ち合わせをしないと何を言い出されるか判らない。

「泣いた分、水分補給だ」

イーサンが酒を注いでくれた。
俺は俺の事で精一杯で、隣に居るグレイスが何も口にしていないとは気付けてなかった。

母から念押しされた客室の話も、まだしていなかった。


結婚出来た、それだけで満足して。


不覚というか、馬鹿だった。