父と母が離婚してから5年が経った。 とても暑い夏の日の昼時だった。 私は,母と暮らしている2LDKのアパートのリビングにいた。 母は仕事でいなかった。 冷房をつけても涼しくなる気配がなかった。 蝉の鳴き声が窓を破って入ってくるかのようだった。 「あ〜もう,うるさい!」 あまりのうるささに読書に集中できなくなった私は,まだ少ししか読み進んでいない本に栞を挟み,冷蔵庫に麦茶を取りに行こうとした。