こうして墓前に立つと、楽しかった思い出や後悔、色んな想いが胸を過る。
 たった十年。けれどその十年の間に、二人はわたしに沢山の愛情を注いでくれた。そんな二人にわたしは何も返せなかったんじゃないかなぁって。そう思うと涙が零れる。

 旦那様は何も言わず、わたしの頭を優しく撫でてくれた。泣くなとも悲しむなとも言わず、励ますこともせず、ただわたしの感情を受け止めてくれたことがとても嬉しかった。


(そういえば……)


 前世でどんな風に生を終えたのか、わたしはちっとも覚えていない。旦那様を看取った記憶だってない。なんでなんだろうって考えてもハッキリとした答えは出なくて。でも、多分だけど、旦那様と一緒に暮らせて、ただひたすら幸せだったからなんだろうなぁって思う。

 お父さんやお母さんも、次に生まれてくるとき、嬉しかったこと、幸せだった記憶だけを覚えていたら良いなぁって、そう思った。