こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

「……重森さん、私のこと疑ってるの?」

「疑っていません。ただ——
 明莉さんを守るために、必要なことをしているだけです」

その言葉に、玲奈は何も言えなくなった。
 電話越しの沈黙が、妙に長く感じられる。

「連絡させていただくかもしれません」

その一言に、玲奈は小さく息を呑んだ。

「……うん。わかった」

通話が切れたあと、
 車内には深い静寂が落ちた。

楓はゆっくりと息を吐く。

(これでいい。
 まだ決定的なことは言わない。
 だが——“線”は引いた)

明莉を守るためなら、
 どんな影にも踏み込む覚悟はできている。

玲奈が何者であれ、
 どんな顔をしていようと、
 どれほど優しい言葉を並べようと——

(明莉さんを傷つけるものは、
 僕が止める)

その決意は、
 車内の静けさの中でひっそりと、
 しかし確かに燃えていた。