こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

「……なんか、冷たいね。あなたは明莉ちゃんの何?」

「冷たく聞こえましたか?
 僕は明莉さんの知り合いのものです。重森と申します」

楓の声は静かだった。
 その静けさが、逆に温度を奪う。

「ねえ、重森さん。
 明莉ちゃん……何か言ってた?」

その言葉に、楓の胸がわずかにざわついた。

「何か、とは?」

「ほら……最近、現場でいろいろあったでしょ?
 落ち込んでたし……私、心配で」

“心配”。
 その言葉が妙に軽く聞こえた。

「あなたは……
 何を心配しているんですか」

玲奈は一瞬、言葉を失った。

「え……?」

「明莉さんが落ち込んでいた理由を、
 あなたはご存じなんですか」

静かだが、逃げ場のない問いだった。

「そ、そんなの……友達だから。見てればわかるよ」

玲奈の声がわずかに震えた。
 楓はその揺れを聞き逃さなかった。

「そうですか。では、もう一つ」

「……なに?」

玲奈の声が、ほんの少しだけ硬くなる。
 その変化を、楓は確かに感じ取った。

そして——
 楓は、核心へと踏み込む。

「明莉さんが階段から落ちた“あの日”。
 あなたは、どこにいましたか」

電話の向こうで、
 空気が凍りついたような沈黙が落ちた。