こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

「歩けますか?」

「……はい。大丈夫です」

ゆっくり立ち上がると、楓がそっと腕を支えてくれた。
 その手の温かさに、胸がじんと熱くなる。

(ああ……怖いけど、楓さんがいるなら……)

病院の廊下を歩くたびに、足が少し震えた。
 階段の手すりを見るだけで、息が詰まりそうになる。

「無理しないでください。ゆっくりでいいんです」

楓の声が、不安をひとつずつ溶かしていく。

病院の外に出た瞬間、風が頬を撫でた。
 その感触に、胸が少しだけ軽くなる。

「……外、久しぶりです」

「ええ。退院、おめでとうございます」

楓が微笑む。
 その笑顔を見た瞬間、胸の奥がきゅっと締めつけられた。

(……この人がいなかったら、私はどうなっていたんだろう)

怖い。
 でも、安心する。

その矛盾が、今の明莉のすべてだった。

「明莉さん」

「はい……?」

「これからしばらく、僕がそばにいます。
 あなたが安心できるまで」

その言葉に、涙がこぼれそうになった。

「……ありがとうございます。本当に……」

声が震えた。

楓は優しく頷いた。

「あなたは一人じゃありません」

その言葉が、胸の奥に深く染み込んだ。
 まるで、心の奥の暗闇にそっと灯りがともるように。