こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

病室の窓から差し込む光が、少しだけ暖かく感じられた。

(……もう、退院していいんだ)

医師からそう告げられたのは今朝のこと。
 体の痛みはまだ残っているけれど、歩くこともできるようになった。

それでも、胸の奥には小さな不安が残っていた。

(また……あんなことが起きたら)

考えるだけで、指先が冷たくなる。

「退院の準備、手伝いますね」

楓がそう言って、荷物をまとめてくれている。
 その姿を見ているだけで、胸の奥がじんわり温かくなった。

「……すみません。全部、お願いしてしまって」

「気にしないでください。あなたが無事なら、それでいいんです」

その言葉に、心がふっと軽くなる。

(楓さんがいると……安心する)

自分でも驚くほど、
 その存在が大きくなっていた。

不安の影が胸の奥にまだ残っているのに、
 楓の声を聞くだけで、
 その影が少しずつ薄れていく。

(……帰るんだ。あの家に)

その事実が、怖さと同時に、
 ほんの少しの安堵を連れてきた。

楓がそばにいる——
 それだけで、前に進める気がした。