こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

明莉が眠る病室は、昼間でも薄暗く感じた。

窓から差し込む光が、彼女の頬をやわらかく照らしている。
 その寝顔を見るたびに、胸の奥がきゅっと痛んだ。

(……守れなかった)

あの日の光景が、何度も頭の中で再生される。
 明莉の体が傾き、叫び声が響き、
 世界が一瞬止まったように感じた。

あの恐怖は、二度と味わいたくなかった。

「……玲奈ちゃん、じゃないよね?」

美咲の言葉が、胸の奥に重く沈んでいる。

楓はすぐに答えられなかった。
 疑うには根拠が足りない。
 だが、信じるには違和感が多すぎる。

明莉の周りで起きた小さな異変。

玲奈の“優しい忠告”。
 スタッフの誤解。
 SNSの噂。

それらはバラバラの点だったはずなのに——
 今は、ひとつの線として浮かび上がりつつある。

(偶然じゃない……そう思ってしまう)

胸の奥に、静かで冷たい確信が芽を出した。

楓は明莉の寝顔を見つめ、
 そっと息を吸った。

(真実を……確かめなければ)

守るために。
 もう二度と、あんな恐怖を味わわないために。