こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

スマホが震えた。
 画面には「美咲」の名前。

「……楓くん? 明莉ちゃん、大丈夫なの?」

声が震えていた。

「命に別状はありません。ただ、しばらく安静が必要です。
 ご心配おかけしました」

「よかった……ほんとによかった……」

安堵の息が漏れる。
 だが、美咲は続けた。

「ねえ……楓くん。
 明莉ちゃん、最近……変だったよね」

楓は息を呑んだ。

「変、というと?」

「なんか……怯えてるみたいで。
 誰かに見られてるみたいに、私といるときもスマホすぐ隠すし……」

胸が冷たくなる。

「……誰か、心当たりは?」

美咲は少し黙ったあと、ためらいながら言った。

「……玲奈ちゃん、じゃないよね?」

その名前が出た瞬間、
 楓の胸に黒い影が落ちた。

明莉の周りで起きていた“異変”が、
 ひとつの方向へ向かって線を描き始める。

(やはり……)

疑念ではなく、
 確信に近い何かが胸の奥で静かに形を持った。