こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

まぶたが重い。
 光が滲んで、世界がぼやけて見えた。

(……ここ、どこ……?)

天井は白く、消毒液の匂いが鼻を刺す。
 病院だ、と気づくまでにしばらく時間がかかった。

「……明莉さん」

名前を呼ぶ声がした。
 その声だけで、胸がじんと熱くなる。

「楓……さん……?」

かすれた声で呼ぶと、すぐそばで椅子が動く音がした。

「よかった……気がついたんですね」

楓の声は震えていた。
 その震えが、どれほど心配してくれていたかを物語っていた。

起き上がろうとすると、頭がぐらりと揺れた。

「っ……」

「無理しないでください。まだ安静が必要です」

楓がそっと肩を支えてくれる。
 その手が温かくて、涙が出そうになった。

「……私、どうして……」

言葉がうまく出てこない。
 階段。足元。揺れる視界。叫び声。

そこまで思い出したところで、胸がぎゅっと締めつけられた。

「落ちたんです。階段から……」

楓の声がかすかに震える。

「でも、命に別状はありません。
 本当に……よかった」

その言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなる。
 生きている。
 ここにいる。
 楓がそばにいる。

それだけで、涙がこぼれそうだった。