こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

「重森さんですね?」

医師が出てきた瞬間、楓は反射的に立ち上がった。

「明莉さんは命に別状はありません。
 ただ、頭を強く打っていて……一時的に意識が混濁しています」

胸の奥がじんと熱くなる。

「……よかった……」

声が震えた。
 安堵と恐怖が入り混じって、うまく息ができなかった。

「しばらく安静が必要です。精神的なストレスも強いようなので、
 ご家族か、どなたか信頼のできるかたを」

「僕が付き添います。僕は彼女の夫です」

迷いは一つもなかった。

病室に入ると、明莉は白いシーツの上で静かに眠っていた。
 顔色は悪い。
 唇も少し乾いている。

それでも——

生きている。

その事実だけで、胸が熱くなった。

「……明莉さん」

そっと名前を呼ぶ。

返事はない。
 けれど、その指先がわずかに動いた気がした。

楓は椅子に座り、彼女の手を包み込む。

「大丈夫です。
 もう……離れませんから」

その言葉は、静かで、揺るぎなくて、
 楓自身の心をも支えるような響きを持っていた。

明莉の手は冷たかった。
 けれど、その冷たさごと守りたいと思った。