こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

午後の撮影。

階段を降りるシーンのリハーサル。

「じゃあ、入りまーす!」

手すりに触れた瞬間——

つるっ。

足元が滑った。

(え……?)

視界が揺れる。
 体が傾く。
 息が詰まる。

落ちる——

そう思った瞬間、誰かの叫び声が響いた。

「危ない!!」

次の瞬間、強い衝撃。
 世界が白く弾けるような感覚。

そして——
 何もわからなくなった。

遠くで誰かが呼んでいる。

「……明莉さん! 明莉さん、聞こえますか!」

声が揺れている。
 泣きそうな声。

(……楓さん……?)

まぶたが重い。
 体が動かない。

ただ、その声だけが必死に届いていた。

「大丈夫です……僕がいます。
 明莉さん、離れないでください……!」

その言葉を最後に、
 意識は深い闇に沈んでいった。