こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

朝、鏡を見ると、自分の顔がどこか強張って見えた。

「……大丈夫。今日は大丈夫」

そう言い聞かせても、胸の奥のざわつきは消えなかった。

スタジオに入った瞬間、スタッフの視線が一瞬だけ止まり、すぐに逸れた。

(また……)

最近、この“また”が増えている。

「佐伯さん、今日こそ無理しないでくださいね」

「昨日も泣いてたって……」

「泣いてません」

声が震えた。
 スタッフは困ったように笑う。

「白石さんが心配してたよ。
 “明莉ちゃん、最近不安定だから”って」

その言葉が落ちた瞬間、
 胸の奥がきゅっと縮んだ。

(どうして……どうしてそんなふうに言うの)

否定しても、笑っても、
 “噂”は勝手に形を変えて広がっていく。

まるで、誰かが意図的に
 “弱い明莉”という像を作り上げているみたいに。

息が少しだけ浅くなる。
 胸の奥のざわつきは、もう誤魔化せないほど大きくなっていた。