こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

撮影所に着くと、スタッフの空気がどこかぎこちなかった。

「佐伯さん、今日こそ無理しないでね」

「昨日も泣いてたって……」

楓は思わず振り返った。

「泣いていません」

明莉が小さく否定する。
 だが、スタッフは困ったように笑った。

「白石さんが心配してたよ。
 “明莉ちゃん、最近不安定だから”って」

その瞬間、楓の胸に冷たいものが落ちた。

(白石……玲奈)

明莉の表情が一瞬だけ強張ったのを、楓は見逃さなかった。

廊下の向こうで、玲奈が明莉を見ていた。

優しい笑顔。
 柔らかい仕草。

だが——

その瞳の奥にある光は、明らかに“友人のそれ”ではなかった。

(……この人だ)

直感が告げた。
 根拠はない。
 だが、確信だけが胸に広がる。

玲奈は明莉に近づき、肩にそっと手を置いた。

「明莉ちゃん、今日こそ無理しないでね。
 最近……危ういから」

その言葉に、明莉の肩が小さく震えた。

楓は拳を握りしめた。
 静かに、しかし確かに。

(これ以上……明莉を傷つけさせない)

胸の奥で、冷たい決意が音もなく固まっていった。