こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

帰宅して、シャワーを浴びて、ベッドに横になる。

楓がまだ帰ってきていない部屋で、天井を見つめながら、
 明莉は胸に手を当てた。

(……私、どうしちゃったんだろう)

疑いたくない。
 信じたい。

でも——
 玲奈の言葉。
 現場の視線。
 SNSの噂。
 小さな“偶然”の積み重ね。

全部が、明莉の心を静かに削っていく。

「……楓さん……」

名前を呼んだ瞬間、涙がこぼれた。

(助けて、なんて……言えないよ)

声にならない声が、枕に吸い込まれていく。
 胸の奥の痛みだけが、静かに、確かに広がっていった。

暗い部屋の中で、明莉はひとり、
 自分の弱さと向き合うしかなかった。