こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

撮影中、明莉が使うはずの小道具が、別のものに変わっていた。

スタッフが慌てて走ってくる。

「ごめん! 誰かが間違えて持っていったみたいで……!」

「いえ、大丈夫です」

笑顔を作ったけれど、胸の奥がざわざわと波立つ。

(どうして、こんなに続くの……?)

偶然だと言い聞かせても、心はもう信じてくれなかった。

休憩中、玲奈が隣に座ってきた。

「ねえ明莉ちゃん。最近、ちょっと疲れてるよね?」

「……そう見える?」

「うん。無理しないほうがいいよ。
 現場でも……ほら、いろいろ言われてるし。
 少し休んだ方がいいんじゃないかな?
 まだ撮り始めたところだし、なんとかなるよ」

“いろいろ”。
 その言葉が胸に刺さる。

「……私、そんなに変?」

「変じゃないよ。
 ただ……危うい、かな。
 私は心配してるんだよ」

優しい声。
 柔らかい笑顔。

なのに、その言葉は刃物のように鋭かった。
 胸の奥の柔らかいところを、静かに切り裂いていく。

(どうして……どうしてそんなふうに言うの……)

玲奈の優しさは、確かに優しい。
 でも、その奥にある“何か”が、
 明莉の心をじわじわと締めつけていく。