こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

朝、鏡を見ると、自分の顔が少しだけ他人のように見えた。

目の下のクマ。
 乾いた唇。
 笑おうとしても、頬がうまく動かない。

「……大丈夫。大丈夫だから」

声に出してみても、胸の奥の重さは消えなかった。

撮影現場に入ると、スタッフの視線が一瞬だけ止まり、すぐに逸らされた。

(また……)

最近、この“また”が増えた。

「佐伯さん、昨日……泣いてたって聞いたけど、大丈夫?」

「え? 泣いてません」

「そう? 白石さんが心配してたよ。
 “明莉ちゃん、最近すごく不安定だから”って」

胸がぎゅっと縮んだ。

(……どうして)

玲奈は優しい。
 友達だ。
 そう思いたい。

でも、どうして“そんなこと”を言うのだろう。

優しさの形をしているのに、
 その言葉は、まるで胸の奥に冷たい針を刺すみたいだった。