こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

明莉と美咲の会話を聞いていると、胸の奥がさらにざわついた。

「最近、ちょっと疲れてる?」
 美咲が優しく尋ねる。

「……ううん。大丈夫です。ただ、ちょっと……いろいろあって」

“いろいろ”
 その言葉が、楓の心に引っかかった。

美咲が心配そうに眉を寄せるが、明莉は笑ってごまかす。
 その笑顔が、痛いほど無理をしているように見えた。

「そういえば、白石さんと仲いいんだよね?」
 美咲が何気なく言った。

明莉の手が、ほんの一瞬だけ止まった。

「……はい。友達……です」

その“間”が、楓の胸に冷たいものを落とした。

(白石玲奈……)

彼女の名前を聞くたびに、胸の奥がざわつく。
 理由はわからない。
 ただ——
 “あの人は明莉に良くない”
 そんな直感だけが、日に日に強くなっていく。

帰り道、明莉は珍しく自分から話し始めた。

「……楓さん」

「はい」

「私……変じゃないですよね?」

その言葉に、楓は歩みを止めた。

「変ではありません。
 ただ……少し、疲れているように見えます」

明莉は俯いた。

「……そうですか」

その声は、ひどく弱かった。

(やはり、何かある)

そう確信した。
 けれど、彼女はそれ以上言わなかった。

楓もまた、無理に聞き出すことはしなかった。
 踏み込めば壊れてしまう。
 その恐れが、胸の奥で静かに疼いていた。