こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

明莉の様子がおかしい。
 そう感じたのは、ここ数日のことだ。

仕事に戻ってから、彼女は以前よりも笑うようになった。
 それは本来なら嬉しいはずだった。
 けれど——その笑顔の奥に、どこか“張りつめた影”が見えた。

「今日もお疲れさまでした」

メッセージを送ると、返事はすぐに返ってきた。

「ありがとうございます。大丈夫です」

その“だいじょうぶ”が、どうしても嘘に見えた。

明莉は、最近よくスマホを見ている。
 通知が鳴るたびに肩が跳ね、画面を伏せるように隠す。

以前はそんなこと、しなかった。

(……何かあったのか)

聞きたい。
 けれど、聞けない。

彼女の心はまだ脆い。
 無理に踏み込めば、また壊れてしまうかもしれない。

だから、楓はただ——
 見守るしかなかった。

その距離が正しいのかどうかもわからないまま、
 胸の奥に小さな不安だけが、静かに積もっていった。