こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

翌日。

控室に入ると、机の上に一枚の紙が置かれていた。

《現場で泣かないでください。
 周りが迷惑しています。》

震える手で紙を握りしめた。

(……誰が)

視界が滲む。
 胸の奥が、冷たい指で掴まれたように痛む。

そのとき、控室の扉が開いた。

「明莉ちゃん?」

玲奈が立っていた。
 いつもの、優しい笑顔のまま。

「どうしたの? 泣いてるの?」

明莉は慌てて紙を隠した。

「……なんでもないよ」

「そっか。
 でも、無理しないでね。
 明莉ちゃん、最近ちょっと……危ういから」

その言葉に、胸がぎゅっと締めつけられた。

(どうして……
 どうしてそんなこと言うの)

玲奈は友達だ。
 そう思いたい。
 ずっと優しくしてくれた。

でも、心のどこかで、小さな声が囁いた。

——違う。
 ——何かがおかしい。

帰り道、明莉はひとりで歩きながら、胸に手を当てた。

「……玲奈ちゃん、どうしたの……?」

疑いたくない。
 信じたい。

でも、優しさの裏にある“何か”が、
 少しずつ、確実に明莉を追い詰めていく。

(私……どうすればいいの……)

夜風が冷たくて、
 涙が止まらなかった。