こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

撮影が続くにつれ、胸の奥に小さなざわつきが積もっていった。

最初は、ただの偶然だと思った。

台本がなくなる。
 衣装が別の場所に移動されている。
 メイク道具が勝手に片づけられている。

スタッフは忙しい。
 現場は混乱するものだ。

だから、気にしないようにしていた。

——でも。

それが“偶然”と呼べない頻度で起こり始めたのは、ここ数日のことだった。

ある日、休憩中にスマホを開くと、胸が冷たくなる投稿が目に入った。

《佐伯明莉、現場でまた泣いたらしい》
《メイクさんに当たり散らしたって本当?》
《復帰早すぎじゃない?》

そんな事実はない。
 泣いてもいないし、誰にも当たっていない。

(……どうして)

手が震えた。
 喉の奥がきゅっと締まる。

そのとき、背後から声がした。