こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

嫉妬は、最初は小さな棘だった。
 触れれば痛む程度の、かすかな違和感。

でも今は違う。
 胸の奥で、黒い何かがゆっくりと膨らんでいる。
 呼吸を押しつぶすように、静かに、確実に。

(明莉ちゃん……どうして私から奪うの)

奪ったつもりなんてない。
 明莉はただ、生きているだけ。
 ただ、前に進んでいるだけ。

——でも、玲奈にはそう見えなかった。

読み合わせが終わったあと、玲奈は明莉に近づいた。

「ねえ、今度ご飯行こうよ。話したいこと、いっぱいあるの」

その瞬間、玲奈は決めた。

——取り返す。
 ——私のものを。

明莉は少し戸惑いながらも、笑顔を作った。

「うん……行こう」

その声は優しい。
 けれど、その奥にあるものは、もう——

戻れない場所へ踏み出していた。