こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

佑輔が明莉を選んだ日、玲奈の中で何かが静かにひび割れた。

そのひびは、音もなく、痛みだけを残して広がっていく。

佑輔が亡くなったとき、玲奈は泣けなかった。

涙が出ないのではない。
 ——涙を流す資格がないと思った。

(だって私は、恋人じゃない)

明莉が泣き崩れている姿を見たとき、
 胸が焼けるように痛んだ。
 息が詰まるほど、苦しかった。

「どうして……どうしてあの子ばっかり……」

その日から、玲奈の中の“ひび”は、ゆっくりと、確実に広がり始めた。

明莉が復帰するという噂を聞いたとき、
 玲奈は心のどこかで期待していた。

——きっと、もう戻れない。
 ——あの子は壊れたまま。

そうであれば、自分だけが取り残されることはない。
 そうであれば、やっと並べる気がした。

でも、明莉は戻ってきた。
 震えながらも、笑顔を作って。

(どうして……)

その強さが、玲奈には許せなかった。
 壊れたはずの子が、また光を取り戻していく。
 その光が、玲奈の胸の奥をさらに深くひび割らせていく。