こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

(……あ、戻ってきた)

ほんの一瞬、明莉は自分を取り戻した気がした。

読み合わせが終わったあと、玲奈が近づいてきた。

「明莉ちゃん、やっぱりすごいね。ブランクなんて感じなかった」

「ありがとう……」

「ねえ、今度ご飯行こうよ。話したいこと、いっぱいあるの」

玲奈の瞳は笑っている。
 でも、その奥にある光が読めない。

(……どうしたんだろう。
 玲奈ちゃん、こんな目をしてたっけ)

違和感。

でも、理由はわからない。
 明莉はただ頷いた。

「うん……行こう」

スタジオを出た瞬間、明莉は大きく息を吐いた。

「……終わった……」

今日も逃げなかった。
 それだけで十分だ。

スマホを見ると、楓からメッセージが届いていた。

「お疲れさまでした。
 帰り道、気をつけてください」

その言葉に、明莉の胸がじんと温かくなる。

(……楓さんに、会いたい)

そう思った自分に驚いた。

でも、その気持ちは否定できなかった。