こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

「明莉ちゃん!」

振り返ると、白石玲奈が笑顔で立っていた。

「久しぶり。心配してたんだよ」

その声は柔らかくて、昔と変わらない“友達の声”だった。

「……玲奈ちゃん」

明莉はほっとした。
 この世界で、自分を“普通に扱ってくれる人”がいることが嬉しかった。

「無理してない? 昨日の撮影、大変だったでしょ」

(……どうして知ってるの?)

一瞬、胸がざわついた。
 でもすぐに打ち消す。
 何かの拍子に情報が回るのは、この世界ではよくあること。

「うん……でも、なんとか」

「よかった。
 明莉ちゃんは頑張りすぎちゃうから、心配で」

玲奈は優しく笑った。

その笑顔の奥にある“何か”に、
 明莉はまだ気づかない。

台本を開くと、手が少し震えた。

(大丈夫……できる……)

読み合わせが始まる。

声を出すと、身体の奥に眠っていた“役者の感覚”が少しずつ戻ってくる。
 台詞が流れ、感情が動き、役が息をし始める。