こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

夜、楓は何度も佑輔のビデオメッセージを再生した。

『明莉を……頼む。あの子は強いけど、壊れやすい。お前なら……守れる』

その言葉が、楓の胸に深く突き刺さる。

——守れていない。
 ——どこにいるのかもわからない。

楓は拳を握りしめた。

「……ごめん、佑輔」

声が震えた。

「俺は……まだ何もできていない」

そして、あの夜が来た。

大雨の中、楓は傘もささずに歩いていた。
 理由はない。ただ、胸の奥のざわつきが止まらなかった。

——明莉さん……どこに……

そのときだった。

道の端で、誰かが崩れ落ちるように座り込んでいるのが見えた。

白いワンピース。
 濡れた髪。
 震える肩。

「……明莉さん?」

楓は駆け寄った。

明莉は、虚ろな目で雨空を見上げていた。

「……あ……れ……?」

声がかすれている。

楓は迷わなかった。

明莉を抱き上げ、胸に抱きしめた。

「大丈夫です。もう……大丈夫ですから」

その瞬間、楓の中で何かが決まった。

佑輔の遺言だからではない。
 重森家の跡取りだからでもない。

——この人を守りたい。

その気持ちが、楓のすべてを動かした。

明莉を抱きしめた腕に、力がこもる。

「あなたを……一人にはしません」

雨の音に消えそうな声で、楓は誓った。