こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

明莉から「終わりました」と電話が来たとき、楓は胸の奥がじんと熱くなった。

——よく頑張った。

その言葉しか出てこなかった。
 彼女がどれほどの恐怖と戦っているか、誰よりも知っているから。

電話を切ったあと、楓は静かに目を閉じた。

明莉の声は、あの日の記憶を呼び起こす。

濱崎佑輔と出会ったのは、大学一年の春だった。

楓は“重森ホールディングスの跡取り”として育てられ、
 常に周囲から距離を置かれていた。

「重森家の息子」
「次期後継者」
「近づけば得をする」

そんな視線ばかりだった。

だが、佑輔だけは違った。

「お前、名前なんだっけ? かえで? いい名前じゃん。よろしくな!」

肩書きも家柄も関係なく、
 ただ“楓”として接してくれた。

その瞬間、楓は初めて“友達”というものを知った。