こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

「佐伯さん、無理しなくていいからね」

カメラマンの柔らかい声に、明莉は胸がじんとした。

「……ありがとうございます」

「ゆっくりでいいよ。あなたのペースで動いてくれたら、それで十分」

その言葉に、カフェ「灯」での美咲の声が重なる。

——無理しないでね。

優しさは、こんなにも温かいのに、
 どうして芸能界ではこんな言葉が少なかったんだろう。

撮影が終わりかけた頃、雑誌の取材担当が近づいてきた。

「佐伯さん、少しお話を伺ってもいいですか?」

明莉は頷いた。復帰後のインタビューは避けられない。

けれど、質問の内容が妙だった。

「カフェで働いていたという噂は本当ですか?」
「精神的に不安定という声もありますが?」

——どうして、そんなことまで。

背筋が冷たくなる。でも、理由はわからない。

(……誰かが、私のことを話してる?
 でも、そんなはず……)

明莉は、玲奈の顔を思い浮かべた。
 優しくて、控えめで、
 いつも「無理しないでね」と言ってくれた友達。

——玲奈ちゃんは、こんなことしない。

そう思うからこそ、
 この違和感の正体がつかめない。