こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

事務所を出ると、楓が迎えに来てくれていた。

「どうでしたか」

「……復帰、決まりました」

楓はほんの少しだけ目を細めた。

「おめでとうございます」

その声は静かで、でもどこか誇らしげだった。

明莉は胸が熱くなった。

「……怖いです。でも、頑張ります」

「大丈夫です。あなたは必ずやれます」

「マネージャーの高瀬さんが、最初は雑誌のインタビューからと話がありました。復帰前に事務所からコメントを出してくださるんですが……最後は私の気持ちを正直に書くことになりました」

「あなたの言葉は、きっと皆さんに届きますよ」

楓の言葉は、まるで背中をそっと押してくれる風のようだった。

その頃。

白石玲奈は、明莉の復帰コメントを見ていた。

「……戻るんだ」

玲奈はゆっくりと笑った。

「いいよ。戻ってきて。そのほうが……壊しやすいから」

その声は甘く、けれど底に冷たい狂気が潜んでいた。

明莉が復帰するほど、玲奈の執着は深くなる。

そして——
 事件の足音は、確実に近づいていた。