こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

「明莉さん。これは、あなたが耐える必要のない痛みです」

楓はスマホをそっと閉じ、明莉の前に膝をついた。

「あなたは悪くありません。
 悪いのは、勝手に写真を撮り、勝手に傷つける人たちです。
 芸能人だからと言って、面白おかしく投稿するのは間違っています」

明莉は唇を噛んだ。胸の奥がじんと痛む。

「……でも、私……
 逃げてばかりで……
 芸能界からも逃げて……
 ここでも……」

「逃げていません」

楓は即答した。迷いも、揺らぎもなかった。

「あなたは、生きるために必要な場所を選んだだけです。
 それは逃げではありません」

その言葉に、涙がこぼれた。喉の奥が熱くなり、呼吸が震える。

楓は続ける。

「でも……もし、あなたが“戻りたい”と思うなら。
 僕は全力で支えます。
 あなたが立ちたい場所に、もう一度立てるように」

明莉は震える声で言った。

「……戻れると思いますか」

楓は迷わず答えた。

「戻れます。あなたなら、必ず」

その言葉は、祈りのように響いた。願いと確信が混ざった、静かな強さがあった。

明莉の胸の奥で、小さく折れていた何かが、そっと立ち上がろうとしていた。

その頃。

白石玲奈は、SNSの炎上を見ながら微笑んでいた。

「……かわいそうに。でも、これでまた一歩近づいたね」

その声は甘く、けれど底に冷たい狂気が潜んでいた。

明莉が傷つくほど、玲奈の満足は深くなる。

そして——彼女は次の一手を静かに準備していた。

画面の光が、玲奈の瞳に不気味な影を落とす。

“奪われたものを取り返すために”。

その歪んだ執着が、静かに、確実に動き出していた。