こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

産院の廊下に、静かな足音が響いた。
 楓の父と母は、少し緊張した面持ちで病室の前に立つ。

「……入っていいのかしら」

「当たり前だろう。初孫だぞ」

父は照れ隠しのように咳払いをし、
 母は胸に手を当てて深呼吸をした。

扉を開けると、
 ベッドの上で明莉が微笑み、
 その腕の中には小さな命が眠っていた。

「……明莉さん……」

母の声が震える。
 その震えは、喜びと安堵と、
 長い時間の想いが混ざったものだった。

「おめでとう……本当に……おめでとう」

明莉がそっと赤ちゃんを抱き上げると、
 母は思わず口元を押さえた。

「……小さい……こんなに……」

父は無言のまま近づき、
 赤ちゃんの顔を覗き込んだ。

その瞬間——
 厳格な男の目に、静かに涙が滲んだ。

「……佑輔……ようこそ」

父は震える指で、
 赤ちゃんの小さな手にそっと触れた。

ぽん、と指を握られた瞬間、
 父の表情が崩れた。

「……強い子だ……」

その声は、
 重森家の長としてではなく、 ひとりの“祖父”としての声だった。

母は涙を拭いながら笑った。

「楓……あなた、本当に父親になったのね」

楓は照れたように笑い、
 明莉の肩にそっと手を置いた。

「……俺たちの家族だよ」

その言葉に、
 父と母は深くうなずいた。

「明莉さん。あなたが来てくれて……本当に良かった。
 この子は……あなたたちの未来そのものだ」

病室の空気が、
 静かに、温かく満ちていった。