こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

「あなたが落ち着くまで、世間から守るための盾になります。
 あなたが望むなら、いつでも解消して構いません」

その声は誠実で、嘘がひとつもなかった。押しつけでも、同情でもない。ただ、まっすぐな想いだけがそこにあった。

「……どうして、そこまで……?」

明莉の問いに、楓は一瞬だけ視線を伏せた。けれどすぐに、まっすぐ見つめ返す。逃げず、誤魔化さず、真正面から。

「理由は……今は言えません。でも、あなたを利用するつもりは一切ありません」

その言葉に、胸が熱くなる。信じたい気持ちと、怖い気持ちが胸の奥でせめぎ合う。

楓は続けた。

「あなたがひとりで苦しむ姿を、もう見たくないんです」

その一言に、明莉は唇を噛んだ。涙がこぼれそうになる。誰にも言われたことのない言葉だった。

「……私なんかのために……」

「あなた“だから”です」

その一言が、心の奥に深く刺さった。痛いほどまっすぐで、逃げ場がないほど優しい。

明莉は震える声で言った。

「……少し、考えさせてください」

楓は静かに頷いた。

「もちろんです。急かすつもりはありません」

その優しさが、また涙を誘った。明莉は俯き、震える指先を握りしめる。

――どうして、この人はこんなに優しいの。

その答えを知るのは、もう少し先のことだった。けれど、この瞬間、確かに何かが動き始めていた。

壊れた心の奥に、ほんの小さな光が灯るように。