こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

翌朝、明莉は病院を出た。

外の空気は少し冷たく、
 でもどこか新しい匂いがした。
 春の終わりの風が、頬をそっと撫でていく。

楓が隣に立っている。

「帰りましょう、明莉さん」

「……はい」

二人は並んで歩き出した。

もう“契約”ではない。
 もう“義務”でもない。

これは——

二人が自分の意思で選んだ未来の始まり。

喪失から始まった道が、
 ようやく“誰かと並んで歩く道”へと変わっていく。

けれど、その未来の先にあるものを、
 明莉はまだ知らない。

——結婚式。
 ——本当の夫婦としての誓い。
 ——そして、その先の未来。

それは、もうすぐ訪れる。

朝の光が、二人の影を静かに重ねていた。

その影は、
 もう二度と離れないように寄り添っていた。