こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

「あなたは、重森さんの自宅に押しかけ、明莉さんに刃物を向けた。
 間違いありませんね?」

刑事の問いに、玲奈は首を振った。

「違う……違うんです……私は……明莉ちゃんを……助けたかっただけで……」

「助ける?」
 楓は静かに言った。

「あなたの“助ける”という行為で、明莉さんは血を流し、手術室に運ばれました」

玲奈の顔から血の気が引く。

「それをあなたは“助ける”と呼ぶんですか」

静かな声だった。
 怒鳴り声よりも、ずっと重く、冷たい。

刑事が質問を続ける。

「あなたは以前から、明莉さんに強い執着を見せていたと証言があります。
 撮影現場での階段の事故も……あなたがやったのではないですか?
 証言も取れています」

玲奈は震える声で言った。

「はい……あの階段の事故も……私が事故に見せかけて細工しました……
 私はただ……明莉ちゃんが怖がって……私を頼ってくれるのを……待っていました……
 でも……明莉ちゃんは……私を頼ってくれなかった……私は……」

玲奈は一息つき、再び口を開いた。

「……最初は……佑輔くんが……好きだったの……」

楓は、その言葉にわずかに眉を動かした。

「でも……佑輔くんは……明莉ちゃんを選んだ……
 私じゃなくて……明莉ちゃんを……」

涙がぽろぽろ落ちる。

「そのとき……私の中で……何かが変わったの……」

玲奈は机の上で震える指を握りしめた。
 その指先は、罪悪感と執着と後悔が絡み合って、今にも折れそうだった。