こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

明莉は声を出せなかった。

涙が止まらなかった。

(佑輔…… そんな……そんなこと……)

胸が痛い。
 喪失の痛みが、また胸の奥を締めつける。

でも、同時に——

温かかった。

佑輔の言葉が、
 まるで優しく背中を押してくれるように、
 心の奥に静かに染み込んでいく。

(……前に進んでいいって……言ってくれた……)

涙が頬を伝い落ちるたび、
 胸の奥の氷がゆっくりと溶けていくようだった。

そのとき——
 楓がそっと、明莉の手を握った。

「……明莉さん」

その声は震えていた。
 佑輔の言葉に触れ、
 明莉の涙を見て、
 楓自身も抑えきれない感情が溢れそうになっていた。

「俺は……あなたを守りたい。これからもずっと」

その言葉は、
 佑輔の“託す”という想いと、
 楓の“選ぶ”という想いが重なった瞬間だった。

明莉は涙の中で、ゆっくりとうなずいた。

(……私……楓さんが……)

心が、静かに傾いていく。

いや——

もうとっくに傾いていた。

ただ気づかなかっただけ。
 怖くて認められなかっただけ。

佑輔の言葉が、
 その最後の扉をそっと開いてくれた。

明莉は、握られた楓の手を
 そっと握り返した。

その温度が、未来の始まりのように感じられた。