こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

まぶたの裏が、ゆっくりと明るくなっていく。

遠くで誰かが呼んでいる声がした。

(……だれ……?)

重たいまぶたを開けると、白い天井が見えた。
 病院の匂い。点滴の音。
 乾いた空気の中で、世界がゆっくりと形を取り戻していく。

そして——

すぐそばで、
 楓が泣きそうな顔で座っていた。

「……明莉さん……!」

その声を聞いた瞬間、胸が熱くなった。
 喉の奥がじんと震え、涙がこぼれそうになる。

「……楓さん……?」

楓は震える手で、そっと明莉の手を握った。
 その手は温かくて、必死で、今にも壊れそうだった。

「よかった……本当に……よかった……」

その声は、今まで聞いたことがないほど弱かった。
 強くて、冷静で、いつも支えてくれる楓が——
 今はただ、一人の人間として泣きそうになっていた。

「明莉さん……守れなくて……すみません……」

楓が頭を下げた。
 その姿に、明莉は胸が締めつけられた。

「違う……私が……勝手に……」

「違います。あなたは俺を守ろうとして……」

楓の声が震える。
 言葉の端がかすれ、感情が溢れそうになっていた。

「俺は……あなたに守られるような男じゃないのに……」

その言葉に、明莉は首を振った。
 涙がにじむ。

「楓さんは……私を……守ってくれましたよ……ずっと……」

楓の目が揺れた。
 その揺れは、安堵と痛みと、どうしようもない愛しさが混ざったような色だった。

病室の静けさの中で、
 二人の手は離れず、
 ただ温度だけが確かに重なっていた。