こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

——初めて出会ったのは、ゼミのオリエンテーションの日だった。

「重森楓、だっけ?なんか固そうな名前だな」

いきなり肩を叩いてきたのが佑輔だった。

「……名前に固いも柔らかいもないだろ」

「あるって。俺は“佑輔”って名前のやつは大体いいやつだと思ってる」

「根拠は?」

「俺がそうだから」

その無根拠な自信に、楓は思わず笑ってしまった。

それが、二人の関係の始まりだった。

性格は真逆だった。

楓は冷静で、
 佑輔は明るくて、
 でも不思議と気が合った。

試験前は一緒に徹夜し、
 サークルの飲み会では佑輔が楓を引っ張り出し、
 楓が落ち込んだときは佑輔が黙って隣に座っていた。

そして——ある日。

「俺さ……本気で好きな子がいるんだ」

佑輔がぽつりと言った。

楓は驚いた。

「お前が“本気”なんて言うの、初めて聞いた」

「だろ?だから怖いんだよ」

「誰なんだ」

佑輔は少し照れながら言った。

「……明莉」

その名前を聞いた瞬間、
 楓は“ああ、この男は本気だ”と悟った。

佑輔は続けた。

「もし俺がダメでも……明莉には幸せになってほしいんだ」

その言葉が、
 今になって胸に刺さる。

(……佑輔)

楓は深く息を吸い、
 再生ボタンを押した。

震える指先で、
 まるで“遺された願い”に触れるように。

手術室の赤いランプが、
 静かに、重く、楓の影を揺らしていた。