こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

手術室の前で、楓はただ立ち尽くしていた。

白い光が眩しい。
 世界が遠い。
 音が全部、膜の向こうにあるようだった。

(どうして……どうして彼女が……)

拳を握る。
 爪が食い込むほど強く。

誰もいない廊下で、
 楓は自分の影を見つめた。

「……俺のせいだ」

声に出した瞬間、
 胸の奥が崩れた。

守ると決めたのに。
 守るために結婚したのに。
 それなのに——

彼女はまた傷ついた。

自分の腕の中で、
 あんなにも弱く、あんなにも軽く。

(俺は……何をしている……)

喉の奥が熱くなり、
 呼吸が乱れ、
 視界が滲む。

明莉の笑顔が、
 泣き顔が、
 自分を呼ぶ声が、
 次々と胸に刺さっていく。

楓は壁に手をつき、
 静かに、深く、崩れ落ちた。

そのとき——
 手術室のランプが赤く点滅した。

楓の心臓が、強く跳ねた。