こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

封筒を握りしめたまま、玲奈は玄関のドアを叩いた。

「明莉ちゃん……! いるんでしょ……!?
 開けてよ……!」

突然の激しいノックに、明莉はびくりと肩を震わせた。

(……誰?
 こんな時間に……)

玄関に近づくと、ドアの向こうから聞き覚えのある声がした。

「明莉ちゃん……!
 開けて……! 話したいの……!」

玲奈だった。

(どうして……ここに……?)

明莉はドア越しに声をかけた。

「玲奈……?
 どうしたの……?」

「どうしたのじゃないよ……!
 なんで……なんで私に言ってくれなかったの……!」

声が震えている。
 泣いているようにも聞こえた。

「言ってくれなかったって……?」

「結婚してるんでしょ……!?
 しかも……契約で……!」

明莉はびっくりして息が止まりそうになった。

(……どうして……それを……?)

驚きと混乱で、
 明莉は——開けてはいけないとわかっていながら——
 ドアを開けてしまった。

その瞬間。

玲奈が飛び込んできた。

勢いのまま、明莉の腕を掴み、
 リビングへと押し込むように突入してきた。

「明莉ちゃん……!
 私に隠してたの……?
 どうして……どうして私だけ……!」

キッチンの壁に押しつけられ、
 明莉は恐怖で足がすくんだ。

玲奈の目は涙で濡れているのに、
 その奥にある光は——
 優しさではなく、壊れた執着だった。

「ねえ……どうして……?
 私には言ってくれなかったの……?
 私だけ……仲間外れ……?」

声が震え、
 呼吸が乱れ、
 感情が制御できていない。

(怖い……
 玲奈ちゃん……こんなの……知らない……)

明莉の喉がひゅっと詰まり、声が出ない。

玲奈の指先が、明莉の腕に食い込む。

「明莉ちゃんは……
 私の……大事な……」

その言葉の続きを言う前に、
 明莉の胸の奥で、
 “助けて”という叫びが弾けた。