こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

「……二度と、明莉さんに近づくな」

その一言は、怒鳴り声ではなかった。
 静かで、低くて、しかし“絶対”だった。

電話の向こうで、玲奈が震えるように息を呑む。

「……重森さん……?」

「次に同じことをしたら、僕はあなたを許さない」

その声は、怒りを超えて“宣告”だった。
 楓の中で、何かが完全に決まった音がした。

楓は通話を切った。

手が震えていた。
 怒りで。
 そして——守るべきものを守れなかった悔しさで。

(……明莉さんを守る)

その決意は、もはや理性では止められない。
 胸の奥で静かに燃え続ける炎のように、揺らぎもしなかった。

楓はゆっくりと明莉の方へ戻った。

明莉は不安そうに見上げる。
 涙の跡が頬に残り、まるで迷子の子どものように震えていた。

「楓さん……?」

楓はそっと彼女の頬に触れた。
 その指先は優しく、しかし確かな力を持っていた。

「大丈夫です。
 あなたを傷つけるものは、僕が全部排除します」

その言葉は、怒りではなく“誓い”だった。
 誰かを傷つけるためではなく、
 明莉を守るためだけに存在する誓い。

明莉の瞳が揺れ、涙がまた溢れた。
 今度の涙は、恐怖ではなく——
 “安心”の涙だった。

楓は彼女をそっと抱き寄せた。
 その腕の中で、明莉の震えが少しずつ静まっていく。

(もう二度と……泣かせない)

楓の胸の奥で、静かな炎がさらに強く燃え上がった。