こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

「……どうしてそんなこと言うの?
 私、明莉ちゃんの友達だよ?」

「友達ではありません」

楓は淡々と言った。
 淡々としているのに、言葉は鋭かった。

「あなたは、明莉さんを追い詰め、怯えさせ、泣かせた」

声は静か。
 だが、その静けさは“刃”だった。

「泣かせた……?
 そんなの、重森さんが——」

「違う」

楓は遮った。
 その一言に、迷いは一切なかった。

「あなたが泣かせたんです」

電話の向こうで、玲奈の呼吸が乱れる。

「あなたが今日したことは、
 明莉さんの生活を脅かす行為です」

「私は……ただ……!」

「ただ、何ですか」

楓の声が低く落ちる。
 その低さは、怒りではなく“断罪”だった。

「ただ“自分の所有物”だと思って、
 明莉さんを縛りつけていただけでしょう」

電話の向こうで、玲奈が息を呑む音がした。

「違う……違う……
 明莉ちゃんは……私が……」

「あなたのものではありません」

楓の声は、これまでで一番冷たかった。
 氷のように、静かで、容赦がなかった。

「なんで……
 なんであなたが明莉ちゃんのそばにいるの……
 なんで……なんで奪うの……!」

叫び声。
 歪んだ感情。
 執着がむき出しになる。

だが、楓は一切揺れなかった。

「奪ったのは、あなたです」

「は……?」

「明莉さんの“安心”を。
 “日常”を。
 “笑顔”を。
 あなたが奪った」

その言葉は、楓の怒りの核心だった。

静かで、深くて、逃げ場のない怒り。
 明莉を守るためだけに燃える、純粋な怒り。
電話越しでも、玲奈はその温度に気づいた。
 息を呑む音が、はっきりと聞こえた。