こわれた私を拾ってくれたのは優しすぎる彼でした

明莉の震える声が、まだ耳の奥に残っていた。

「……玲奈ちゃんが……家の前に……」

その言葉を聞いた瞬間、
 胸の奥で“何か”が静かに切れた。

怒鳴りたいわけじゃない。
 暴れたいわけでもない。

ただ——

守るべきものが脅かされた時の、男の本能が目を覚ました。

玄関を開けると、
 明莉が泣きながら座り込んでいた。

「楓さん……っ」

その姿を見た瞬間、
 胸の奥の怒りが一気に膨れ上がった。

(……泣かせたのか)

誰が、ではない。
 もう答えは出ている。

楓は明莉を抱き寄せ、
 震える肩をそっと撫でた。

「大丈夫です。もう大丈夫」

声は静かだった。
 けれど、その静けさの奥にあるものは——
 怒りではなく、“決意”に近かった。

明莉の涙が、楓の胸元を濡らす。
 その温度が、楓の中の炎をさらに強くする。

(明莉さんを……二度とこんな目に遭わせない)

抱きしめる腕に、自然と力がこもる。
 守るための力。
 奪わせないための力。

明莉はその強さに気づいた。

(……怒ってる)

楓の怒りは、もう限界に近い。
 静かで、深くて、逃げ場のない怒り。

その怒りは、
 誰かを傷つけるためではなく、
 明莉を守るためだけに燃えていた。