「ああ、咲奈ちゃんと両想いだなんて。夢みたいで幸せだなぁ」
「私も、幸せです」
幸せだけど。先輩が後ろにいるせいで、私のほうから彼の顔が見えないのは辛い。
「あの、須藤先輩」
「須藤先輩、じゃなくて。海里って呼んで」
「海里……先輩?」
「ん。それで? なーに? 咲奈」
いつの間にか先輩の私の呼び方が『咲奈』と呼び捨てになっていて、心臓が跳ねる。
「いや、あの。せっかく今一緒にいるのに、海里先輩の顔がさっきからずっと見えないのが辛いです」
「えっ、何それ。可愛いこと言ってくれるね、咲奈は。それじゃあ、右向いて?」
私が言われたとおりに右を向くと、こちらを向いてくれた先輩とようやく至近距離で目が合った。
しばらく黙って、お互い見つめ合っていると。
──ちゅっ。
……!!
先輩が私の唇に、触れるだけのキスを落とした。



